ナガノヤスユ記

現金に手を出すなのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

現金に手を出すな(1954年製作の映画)
4.0
いわゆる腐れ縁とでも言うべき友情と、これからの人生との天秤。現役引退間近の男に課せられた究極の選択。という、言ってしまえば古今東西繰り返されてきた物語の定型にすぎない話なのだけど、妙なディテールに泥臭い人間の機微があり、渇いたギャングの関係性のなかに湿っぽいユーモアがある。すべてが金の下に等置されるまえの最後の抗い。金塊を奪う過程という最大のスペクタクルを物語の前提、映画の外部構造にしてしまう。何を描くか、よりも、何を描かないか、にホンモノが宿る。時に、しゃべらないこと、が一番雄弁であるように。