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ポーリーヌのemilyのレビュー・感想・評価

ポーリーヌ(2001年製作の映画)
3.8
知的障害をもつ66歳のポーリーヌは姉のマルタと二人で暮らしている。お庭に水をやり、妹のポレットのかわいい洋服屋さんが大好きでいつもお店に行って邪魔ばかりしている。そんなある日マルタが亡くなってしまい、妹のポレットかセシーヌのどちらかがポーリーヌの面倒をみなくてはいけなくなった。手厚い対応をすればマルタの残した遺産が彼女たちの手にわたるのだが・・

おとぎ話みたいなポーリーヌの頭の中をそのまま映像化したような、メルヘンなお家、一面お花だらけの庭園、ピンクや赤を基調とし、包み紙はバラの乙女チックなポレットの洋服店。ただここで繰り広げられるのは、年老いた女性たちの物語である。ポーリーヌはもちろんだが、マルタもポレットも独り身である。ポーリーヌは年老いた大きな子供のようで、いたずらばっかりして困らせるけど、ピュアな心は時に癒しにもなる。ほのぼのしたタッチで全編を包み込みながら、マルタの死後は厄介者でありつつ、やはり姉妹なので無下にできないポレットとセシーヌの絶妙な描写の中に、マルタの不在をしっかり感じさせる描写を絡ませ、しっかりと人間ドラマを構築していく。

音楽にのってジョーロで水をやるポーリーヌ、バラの包み紙をアルバムに張ってお花の夢物語に浸ってるポーリーヌ、とにかくお花畑の描写と音楽挿入のセンスが抜群で、見てるだけで幸せな気分にしてくれる。そこにポーリーヌのピュアな心に触れて、じんわりと温かい気持ちを残してくれるのだ。

一緒にいるときは厄介で、一人になりたいと思っていたポレット。お店を閉め、念願の海辺の小さなアパートに住むことになるが、このアパートの窓に映る海が非常に美しい。うれしいはずの一人暮らしはさみしく感じてしまう。それはポーリーヌと過ごした日々が彼女の日々を上塗りしてしまっているから。思い出すのが、いつもポーリーヌが言ってた言葉「石が入ってる」冷たい飲み物をお店で飲んだ時に、いつも言ってた言葉、石=氷のことである。一緒にいる存在が疎ましく思うようになれば、こうやって距離を置いてみればわかる。その人が自分にとって必要な存在かどうか。海辺で立たずむ老人二人、老人なのに親子のように見える。それはポレットの優しいまなざしがまるで子供を見るようだからだろう。またそこに配置されたブルーと白のボーダーのベンチも可愛い。

シンプルだが幸せと愛と花にあふれた、ほんのり幸せなオーラで包んでくれる作品。これが子供ならばただかわいいだけあろうが、ここに老人、独居老人などの切なくシビアな現実と交えることでただのメルヘンなだけの物語になってないのがいい。
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