半兵衛

冒険大活劇 黄金の盗賊の半兵衛のレビュー・感想・評価

冒険大活劇 黄金の盗賊(1966年製作の映画)
3.4
豊臣が隠した埋蔵金をめぐって、主人公の盗賊コンビ(松方弘樹&大瀬康一)や幕府の隠密、石田三成の残党一味がそれぞれに手に入れんと激闘を繰り広げる娯楽時代劇。澤島忠監督のスピーディーで無駄のない演出、遠藤太津朗や藤山寛美、春川ますみ、田中邦衛といった名優たちによる一癖も二癖もある謎の多いキャラの好演(邦画では珍しく、後半になるまで彼らの正体が掴めないので見てるこちらも緊張してくる)がいつもの明朗な東映娯楽映画とは違うノリの時代劇スパイ映画といえる佳作に仕上がっている。

アクションが少なく、誰が敵で誰が味方か判別できない中金塊の行方を調査する前半から、テレビとはスケールが段違いのセットで矢継ぎ早に繰り広げられるアクションへなだれ込む後半という巧みな構成による展開が見事。主人公の二人や登場するキャラがあまり刀を使わず、個性的な武器で戦うのも面白い。その他にも走っている馬車や、カリオストロの城のような様々なギミックのある基地などアクションする場所も工夫されている。なかでも水中を泳いで敵の基地に入ろうとする主人公が敵の襲撃を受けるシーンで、本当に矢が降りかかってくるのには少し驚いた。

主人公の松方弘樹がヒロインの野川由美子にお熱で、敵の襲撃を受けたりしてもひたすら彼女を追っかけ回す姿や、敵の基地に侵入する際敵が操縦する船にへばりついて乗り込んだり、敵の山伏の格好に変装して敵の本拠地に乗り込んだりと随所に出てくるルパン三世チックなノリも楽しい。

汐路章が埋蔵金の行方を握るキーマンとして登場し、結構出番がある。しかも拷問を受けたり、敵の襲撃を受けてひたすら逃げたりと見せ場もある。あと奉行役で出演する若き日のはつらつとした岩尾正隆も印象的。

でも全体的には楽しいけれど、ヒロインの野川由美子の存在が今一つ話に噛み合っていないのが残念。ぶっちゃけて言えば別にいらないし、彼女に惚れていた松方弘樹が怒りをぶつける場面はあるがその後すぐにお宝探索に励むので何のためにいたのかという気分になる。

ラストも少し尻窄み、どうせなら前半の流れと同じく幕府より二手三手先を読んでの痛快な終わりかたの方がこの作品にあっていた気がする。
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