がちゃん

パパは、出張中!のがちゃんのレビュー・感想・評価

パパは、出張中!(1985年製作の映画)
3.8
ほのぼのとした描写の中に、
社会主義の言論統制批判を交えた社会派作品です。

浮気相手にうっかり体制に対する軽口をたたいたため、それが秘密警察に漏れ鉱山送りになった父親。

家族はいなくなった父親は出張中ということで、マリク少年を納得させていた。
物語はマリク少年の視線で語られる。
序盤の割礼の場面(痛そう)から、ちょっぴり哀しい初恋、
何かわかないけど怪しげな大人たちの会合。

時折公共ラジオでサッカーのワールドカップ(?)の実況があり、村中が熱狂的に聞き入っている。
ついには家族全員地方送りになるのだが・・・

少年は夢遊病の癖があり、夜中に町中を歩き回るシーンは少し不気味でファンタジィ。

初恋の女のこと一緒にお風呂に入り、性に目覚めるシーンもある。

1950年代の共産主義の痛烈批判作品。
言いたいことが言える社会があたりまえの日本が、どれだけ幸せかを実感する。

クライマックスではマリク少年まで、
言論統制の疑惑をかけられそうになる。

ラスト近く、ラジオではユーゴのサッカーチームがソ連に勝ったことを報じ体制が壊れたことを暗示している。

人情味もあり、いいシーンも多いのだが、全体として厳しい社会を描いているため、楽しい作品ではない。

私は、シュレンドルフの『ブリキの太鼓』 を連想した。
作品のタッチは『ブリキの太鼓』より穏やかだが、少年の視線で時代を語る点に似たものを感じた。

興味のある方はドゾ!
がちゃん

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