このレビューはネタバレを含みます
『アンダーグラウンド』『ジプシーの時』に続いて本作でクストリッツァ3作目。クストリッツァ作品は独特の民謡音楽と幻想的な世界観が特徴だが、上記2作品に比べると幻想的要素より、当時の社会と人間をリアルに描くことに重きを置いている印象を本作には受けた。
舞台は1950年代チトー政権下のユーゴスラビアで、自主管理社会主義の閉塞感がよく描けてる。内容はだらしない父親に振り回される家族の物語で、末っ子のマリクの視点を中心に描かれる。
作中、ラジオで盛んにサッカーの生中継が放送され、必ずといっていいほどユーゴスラビア代表が勝利を収めていたが、そこには当時の欧州サッカーの中心が西ヨーロッパではなく中央ヨーロッパにあった背景がある。