イチロヲ

夏への扉のイチロヲのレビュー・感想・評価

夏への扉(1981年製作の映画)
4.0
母親の愛情を受けずに成長した男子生徒が、年上の娼婦との出会いを契機にして、偏向的な恋愛観を成長させていく。竹宮惠子の同名短編コミックを映像化している、アニメーション作品。

フランスの男子寮を舞台にして、ガラスの心をもった少年たちの複雑怪奇なセックス観念を綴っている作品。漫画に準拠した作画と羽田健太郎の美麗なピアノ音楽がフィーチャーされており、メランコリックな雰囲気に満ち足りている。

登場する男子は全員童貞であり、合理党という名の「童貞同盟」を結成している。主人公はマザコン心理を抱えたままで思春期に突入した少年。彼の恋愛観の変容に合わせて、童貞同盟がドラマティックに崩壊していく。

まるで、70年代に隆盛した「筆おろし映画」とカトリーヌ・ドヌーヴ主演「反撥」を併せて、ブラッシュアップさせたような作風。ドラマ面は既視感があるけれども、単体のアニメ作品としては芸術の領域。
イチロヲ

イチロヲ