オーウェン

黒衣の花嫁のオーウェンのレビュー・感想・評価

黒衣の花嫁(1968年製作の映画)
4.0
小説の場合には倒叙型、つまり犯人の側から事件を書くスタイルは、むしろ例外なのだが、映画にはこの倒叙型が多いと思う。
映画は謎解きの理屈ではなく、実際の行動の描写だから、犯行を追う方が、余程、作りやすいし、良い映画になると思う。
このフランソワ・トリュフォー監督が、敬愛するアルフレッド・ヒッチコック監督へオマージュを捧げた「黒衣の花嫁」は、この倒叙型の典型的な映画で、観る者は連続殺人の犯人が、ジャンヌ・モローであることを初めから知っている。
むしろ謎は、なぜ彼女がかくもゆるぎなき意思を持って、次々に殺人を行なうかという、動機の方にある。
彼女はつくづくきつい顔をしている。拳銃や弓矢や毒薬がよく似合う。
そして、この映画の面白さは、このゆるがぬ意思、確たる決意のうちにある。
三人目の被害者が死ぬ直前に、彼女は、自分の目的を明かし、それでようやく観る者は、連続殺人の脈絡と動機を知ることになる。
結婚式の最中に死んだ夫の復讐というのは、殺人の理由として、あまりにもロマンティックで、説明にはなっても、彼女への同情を呼びはしない。
そして、その非現実的なところが、ミステリーとしては成功の要因になっていると思う。
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