ぽち

マルタイの女のぽちのレビュー・感想・評価

マルタイの女(1997年製作の映画)
3.4
普通の監督作なら十分に楽しめる作品と言えるのだが、伊丹監督作としては物足りない作品。

普通の邦画から比べれば十分立っているキャラクターなのだが、伊丹作としては全員弱いのがどうしても残念だ。

主役の大女優がステレオタイプで当たり前すぎるし、その心情の変化も全部読める展開で普通。
でもこれは演じている宮本の力でかなり助けてもらっているのは事実だろう。

一番気になったのが、本当はビワコより目立っても良いぐらいのキャラである武骨な立花刑事キャラ。演じた西村は良い役者だと思うが今一つこの美味しいキャラを表現しきれていない。

というか、もっと魅力的に出来たのにと思ってしまう。ミスキャストと言えるのではないだろうか。

全体にはちょっとひいてしまっていて毒が薄すぎる。
今作を作る切っ掛けともなった伊丹に対する山口組系後藤組構成員による襲撃事件などで、怯んでしまったのではと邪推してしまう。

新興宗教がらみの描写はもっと行けたはずなのに手ぬるいのが残念だ。

などと文句を書いてしまったが、邦画としては高いレベルを保っている作品で、これが伊丹監督作の遺作かと思うと残念でならない。
もっとたくさん映画を作ってほしかった・・・・・・・




余談。
wikiによれば
「1997年11997年12月20日、伊丹プロダクションのある東京都港区麻布台3丁目のマンション南側下の駐車場で、飛び降りたとみられる遺体となって発見された。葬儀は故人の遺志により執り行われなかった。当初からその経緯について様々な説が飛び交った。」

暴力団による襲撃事件や、ワープロによる遺書。その不自然な内容などから、いまだに他殺説が絶えない伊丹監督の最期。

1984年から1997年の今作まで13年間で10本の映画を残した。
この才能豊かな監督が生きていたら、この後どんな素晴らしい作品を生み出してくれたか…残念でならない。
ぽち

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