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雨の朝巴里に死すのNMのレビュー・感想・評価

雨の朝巴里に死す(1954年製作の映画)
3.8
原題『The Last Time I saw Paris』。

1954年、パリは第二次世界大戦の集結に湧いていた。
米軍のチャールズはそこでふと美しい女性に祝福のキスをされる。

喧騒を離れカフェに寄ると、別の女性が目に留まる。彼女もこちらを見ている。彼女はチャールズの戦友クロードと一緒にいた。どうやら結婚するようだ。だが何となく気になる態度。

その女性はマリオンといった。うちでパーティーがあるからと誘いを受け尋ねると、あのキスの美女と会った。彼女はヘレンといいマリオンの妹だった。
再びキスを交わしすぐに惹かれ合うヘレンとチャールズ。

ヘレン一家はアメリカから渡仏してきた。ヘレンもその父も陽気で楽観的な性格。パリの生活を楽しんでいた。
ヘレンがパリで働くよう勧めたこともあり、チャールズは除隊しパリで結婚し通信社で働く。
妊娠・出産すると、ヘレンはしっかり母親として落ち着いた。

所有していたテキサスの土地から石油が発掘され一家は使い切れないほどの収入を得ることに。チャールズは仕事を辞め、小説執筆に専念できるようになった。

数年後、チャールズは三作目も出版に至らず、自分は無能な金持ちだと激しく落ち込んだ。
酒に逃げ、さらに以前取材をした女性と再会し遊び歩く。
一方ヘレンにも優してくれる男性がいる。
ヘレンは結婚生活に危機を感じ、このままではだめになる、その前にアメリカに帰り立て直そうと最後の提案。
危機感のないチャールズは聞かなかった。
他の女性と出かけ酔いつぶれて帰って眠り込み、その夜ヘレンが家のドアを叩いたことに気づかなかった。

家を締め出されたヘレンは雨のパリを傘もなくさまよい、翌朝たどり着いたマリオン夫婦宅で倒れる。搬送され危篤状態。
ヘレンは、知らせを受けかけつけたチャールズに、娘のことを頼むと最期の言葉を残す。

ヘレンはチャールズのせいで死んだと怒る姉マリオンは、娘を引き取りチャールズを会わせなかった。
数年後、アメリカに戻り酒を控え仕事に邁進したチャールズは、娘を迎えに戻ってきた。
マリオンが留守だったので夫クロードのはからいでつかの間娘と楽しく遊びにいくと、娘は私を愛してるなら一緒に住んでと訴えた。

マリオンはやはりそれを許さない。
夫クロードは、チャールズへの恋は諦めろと諭す。全て承知の上で結婚し黙って見守ってきたらしい。
君は手に入らない腹いせに娘を奪って復讐している。僕も僕たちの子が欲しい、失意からではなく愛の。
と説得され、ついに長年の気持ちに整理をつけたマリオンは、パリを後にするチャールズと娘を笑顔で見送った。

はじめは幸せ全開な二人。そこから何かがおかしくなっていく様子が見どころ。愛し合う二人なのに上手く行かなくなり、結婚生活が失われて始めてその尊さに気付く。後悔しても戻らない。自責の日々。

二人は途中で金持ちになるが、結果としてそれが破綻の一因となったようだ。夢を追うことには代償が伴うらしい。
石油が出たので仕事を辞めるという判断に誰しも一抹の不安は感じたと思うが、実際自分がそうなったとき変わらず勤められるとは思えない。

チャールズと娘ビッキーの絆は第二の見どころ。素直に涙を誘う。

クロードが人格者で素晴らしいの一言。愛しているから自分が一番でなくても愛し続けてきた献身もすごい。失意からではなく愛からの子が欲しいという台詞が印象的。
姉妹の父も優しくていい人。

エリザベス・テイラーとドナ・リードが圧倒的な美しさ。
テイラーは憂いを湛えつつ深く熟慮する女性を見事に演じている。
姉役ドナはずっと目立った行動はしないがどこか不自然で印象に残るという役どころをこなし美味しいところを持っていった。

原作『バビロン再訪』は積ん読してあった気がする。時代も場所もだいぶ異なるようなのでいつか読んでみたい。
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