ナツミオ

アンダーグラウンドのナツミオのレビュー・感想・評価

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
4.2
NHK-BSPプレミアムシネマ録画鑑賞

”苦痛と悲しみと喜びなしでは、子供たちにこう伝えられない。『むかし、あるところに国があった』と"

初見。前から観たかったが長時間(171分)で敬遠していた。
かなりクセの強い作品だが、非常に印象深い作品‼️観て良かった‼️

鬼才エミール・クストリッツァ監督が、祖国ユーゴスラビアの50年の悲劇の歴史を重厚な映像美とブラック・ユーモアで描く傑作叙事詩。

・カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞

・1996年度キネマ旬報外国映画ベストテン第3位。

原題 『Underground』
(セルビア語: Подземље)

1995年仏・独・ハンガリー・ユーゴスラビア・ブルガリア製作
監督・脚本 エミール・クストリッツァ
脚本・原案 デュシャン・コバチェヴィッチ
音楽 ゴラン・ブレゴヴィッチ
撮影 ヴィルコ・フィラチ
出演 ミキ・マイノロヴィッチ ラザル・リストフスキー ミリャナ・ヤコヴィッチ 

日本語字幕 清水馨

(NHK番組内容より)
1941年、ナチス侵攻下のベオグラード。
共産党員のマルコ(マイノロヴィッチ)は、親友のクロ(リストフスキー)や避難民を地下室に匿い、武器を製造させ巨大な富を築く。やがて戦争が終わっても、マルコは彼らに真実を告げず、地下に閉じ込め続けるが……。

鬼才エミール・クストリッツァ監督が、祖国・旧ユーゴスラビアの50年に渡る悲劇の歴史を、重厚な映像美とブラック・ユーモアでエネルギッシュに描き、カンヌ映画祭2度目のパルムドールに輝いた傑作叙事詩。

多民族国家で争いが絶えなかったユーゴスラビアの歴史。
国家の多様性から『七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家』と形容される旧ユーゴスラビアの歴史を背景に、1人の女を巡る2人の男が繰り広げる人間ドラマ。

物語は大きく3章に区切られ、
第一章「戦争 (Deo Rat)」
第二次世界大戦でのナチスドイツ侵攻から1945年終戦まで
チトー率いるパルチザン部隊へ参加

第二章「冷戦 (Deo Hladni Rat)」
戦後、チトーによる共産主義連邦国家の成立
ソ連に属さない共産主義
1961年、チトーの重鎮となったマルコ。

第三章「戦争 (Deo Rat)」
1990年代の内戦で旧ユーゴスラビアは消滅。

ブラックなコメディ描写、後半は厳しい現実から夢想(理想)世界へ。
公開時、まだボスニア紛争中であり、クストリッツァ監督が、荒廃した祖国の惨状への怒りとユーゴスラビアへの強い愛情を感じた‼️

特に音楽が印象的。
オープニングからエンディングまで常に流れる、
ユーゴスラビアの民族音楽、”ジプシー・ブラス"(ロマ音楽)を取り入れた楽曲が耳から離れない。

また大戦中のドイツ将兵たちに愛された楽曲”リリー・マルレーン"
そして敵味方を超え連合軍将兵にも愛されたこの曲がラジオから流れ、皮肉っぽく効果的に使われている。

印象的なシーン
・クロ(リストフスキー)について廻る、ブラスの楽団たち。
”ジプシー・ブラス"のインパクトが強すぎる‼️

・それぞれの時代の実写映像に、映り込む出演者たちの姿は、まるで『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)のよう⁇

・ヨヴァンの結婚式の日、密造戦車に乗ったイヴァン(スティマツ)の親友のチンパンジーが誤って砲撃を始め、地下結婚式は大混乱‼️

・火に包まれた車椅子が高速で回転するシーンはショッキング‼️

・終盤のドナウ川に面した小さな半島でのヨヴァンとエレナの結婚式。
生者と死者共々に出席して宴が盛り上がる中、半島に亀裂が入り、大地から離れてドナウ川に漂うところは、まるで”ひょっこりひょうたん島"⁇状態。

・ラストのナレーションが印象深く刻まれる。
”苦痛と悲しみと喜びなしでは、子供たちにこう伝えられない。『むかし、あるところに国があった』と"



【忘備録】ネタバレ無し

(ジプシー・ブラス)
チョチェク(セルビア・クロアチア語:чочек / čoček)は、バルカン半島で19世紀頃興った音楽のジャンル、およびダンス。
主にロマ(ジプシー)民族により演奏されるロマ音楽の一種である。ブラス楽器で演奏されることも多く、英語ではジプシー・ブラスと呼ばれることもある。その音楽は快感のある高速ブラスとして知られている。その迫力のあるスピードから世界最速のブラスだとも言われている。
(Wikipediaより)

(キャスト)
・マルコ Marko
- ミキ・マノイロヴィッチ

・ペタル・ポパラ"クロ"
Petar Popara Blacky
- ラザル・リストフスキー
「クロ」は原語でセルビア・クロアチア語: Crni(ツルニ)、セルビア語で黒の意。

・ナタリア Natalija
- ミリャナ・ヤコヴィッチ

・フランツ Franz
- エルンスト・シュテッツナー

・イヴァン Ivan
- スラヴコ・スティマツ

・ヨヴァン Jovan
- スルジャン・トドロヴィッチ

・Vera
- ミリャナ・カラノヴィチ

・Jelena
- ミケーナ・パヴロヴィック

・Golub
- ボラ・トドロヴィッチ

・Bata
- ダヴォール・ドゥモヴィッチ
ナツミオ

ナツミオ