エミール・クストリッツァの祖国であるユーゴスラヴィア。すでに解体された国であり、現在は存在しない。
あまりにもデカダンで暴力的な喜劇だが、国がひとつ無くなったという揺るぎない事実が痛切に描かれている。
かつてユーゴという国があったことを語り継ぐことを名目に加えて、同時に"何故それを映画でするのか?"という問いに対しても言語外で殴るようにして伝えてくる。
クストリッツァ本人のイデオロギーには賛同できない部分もあるんだが、作品の力強さにはただただ圧倒されてしまった。
騒々しいブラスの演奏、爆撃音や銃声が忙しなく続くなか、終盤で描かれた静寂のコントラストは言葉を失うほど美しかった。
ラストシーンは紛争で失った者たちに対するクストリッツァの祈りなのだろうと思う。
"許そう だが忘れないぞ"
個人的メモ
No Smorking Orchestraからクストリッツァを知ったので、映画でも過度なほどジプシーバンドが使われていたのは結構うれしかったな。クストリッツァ、シド・ヴィシャスがカバーしたシナトラの「My Way」が好きらしい。マジで?と思ったけど、音楽性的には納得する。