”知性の巨人”と呼ばれ”アナキスト”と自称する哲学者ノーム・チョムスキーの、"テロ"に関する講演の模様とインタビュー。"9.11"の翌年の制作。監督は日米で活動するドキュメンタリー監督ジャン・ユンカーマン。音楽は忌野清志郎。
同監督の「映画 日本国憲法」(2005)でチョムスキー氏に興味を持ち鑑賞。
71分と言う短い尺ではあるが、世界で起こっている「テロ」の原因の多くがアメリカ政府にあるという分析、そして我々が「テロ」をなくすための考え方が明瞭に提示され大きなヒントになった。
本作が作られた11年前、チョムスキー氏のアメリカ批判は同国内からバッシングを受けたとのこと。しかし現在の国際情勢は彼の指摘を証明する形となっている。
我々に出来ることは、平和を諦めずに希望を持ち、平和に向けた考え方と発言を続けることなのだと再認識した。
※以下内容のメモ(アメリカ批判が並ぶが偏っているとは思わない)
・テロ行為を停めたければまず第三国が参加しないこと
・アメリカ政府の「対テロ戦争」と言う言葉は眉唾。世界最大のテロ国家がアメリカだから
・イスラエルによるパレスチナの占領を軍事的経済的に支援し続けているアメリカ政府
・イスラエル軍を動かしているのはアメリカ人の税金
・アメリカ政府は国連による平和的決議をずっと妨害し続けている
・それでも、ベトナム戦争、アフガン戦争、9.11を経て、現代世界は良い方に向かっている。市民の世界的視野と平和意識が高まっている。
・希望をもって平和を目指す発言を続けることが大切。
チョムスキーは専門である言語学を人間の能力を探る学問とし「言葉とは社会モラルを作ろうとする人間の本質的な能力」だと定義する。
自分がされて嫌なことを他人にもしないというのが最低限のモラルだが、権力者(偽善者)にはそれがわからない。
聖書の引用「偽善者とは他人に適用する基準を自分に適用しない人間のこと」。つまり偽善者は、テロは許さないが自分がテロを行うことは許す=アメリカ政府
※チョムスキー氏は、子供の頃からユダヤ人としてシオニズム思想の中で育ったが、青年期に国際婦人服労働組合に所属する社会主義者の親族から影響を受け、左派思想→アナキズムへと進んだ。