OASIS

スターダスト・メモリーのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ニューヨークに住む映画監督のサンディが、新作映画のエンディングについて苦悩する様子を描いたウディ・アレン監督作品。

現実と夢と、映画と美女。
星屑のように、愛や思い出は降り積もる。
映画内映画、そして更に深層まで。
ウディ・アレン的「8 2/1」とも言える本作は、コメディ路線とシリアス路線という彼自身の作風の方向性についての葛藤とリンクするかのようであり。

喜劇の帝王として名を馳せたサンディは「もうお笑い映画は創りたくない」と自暴自棄気味。
気晴らしにと故郷で開かれた映画祭にやって来たサンディを待ち受けていたのは、サインの要求、講義の依頼、パーティーの誘い、チャリティ活動の勧誘などなどの観ているこちら側すらうんざりして来る連続攻撃。
右を左へのあまりの忙しなさに笑えてくるが、当人からしたらたまったものではないだろうなとその可哀想なまでの人気ぶりに嫉妬。

映画についての悩みから逃れるように、元カノのドリーや不倫相手のイソベル、バイオリニストのデイジー等の美女らと遊び歩く。
ドリーを演じるシャーロット・ランプリングのセクシーさの中に陰りが見える良い女っぷりがサンディのみならず見るもの全てを惑わす威力を放っている。
サンディも「君のカリスマ的迫力は素晴らしい」と絶賛したりするものの「万能っていうことは何にも出来ないってことなの」とこれまた影を覗かせる部分が掴み所が無くて愛おしい。

サンディが語っていた「人生で管理出来るのは二つだけ。芸術とマスターベーション。僕はその二つの達人さ」なんていう台詞は「芸術」の部分を○○と置き換えて何にでも流用出来そうな気がするのでことあるごとに使って行こうと思う。
映画監督という役柄上、お洒落というか皮肉的な意味合いの台詞の方が多いのだが、サンディ以外にもファンや批評家などがこぞって「こちら側」に向かって「あの作品は最高だったよ!」「あんたはやっぱり天才だ!」等と賛辞の言葉を浴びせ掛けてくれたりするのでただ映画を観ているだけなのに何だか気分が良かった。

過去の思い出を振り返るよりも、今現在を楽しく生きようという深いようで浅い、けど良く考えてみるとやっぱり浅い。
そんな浅くて深いメッセージと、浅くて深い眠りのような夢見心地な気分を感じる作品だった。
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