ベビーパウダー山崎

スターダスト・メモリーのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)
4.0
これがフェリーニ『8 1/2』のパロディってこともお前ら大衆は気づかず、くだらないギャグで笑ってなにもかも消費しちまうんだろ…って感じでメタ的な自虐として撮っているところもある。ベルイマンの「精神が疲弊し狂っていく女性」をシャーロット・ランプリングに演じさせるウディ・アレン。捻れているが、撮りながら興奮しているのが伝わってくる。アレンはベルイマン映画のリヴ・ウルマン的な存在を求めていて、もちろんその「役割」はミア・ファローが担うことになるわけだが、それはそれで不幸な結末。
ダイアン・キートンもファローも出てこない隙間の映画。だからこそアレンが映画に吹き込む「人生と表現」の(キモ)エキスが更に濃い。UFOを待つ人々、気球のくだりが大好き。あの寄り道に俺は「映画」を見る。自宅の壁にグルーチョ・マルクスや『サイゴンでの処刑』の写真をデカデカと貼り付けるあれ、幼きころ憧れたな。天井が高い部屋にさえ住めなかったが。
偏愛している作品なので、アレン映画で三本選べと脅されたら入れるかも。死ぬ前に最も幸福な瞬間がわかったんだ、なんでもない日に彼女とぼんやりしている時間。これは確かにそう。人生重ねて俺もたどり着いた。小さな自分を大きく見せようと、妄想と虚勢ばかりのウディ・アレンだが、稀に真実もあるにはある。