Maoryu002

絶壁の彼方にのMaoryu002のレビュー・感想・評価

絶壁の彼方に(1950年製作の映画)
4.4

アメリカの外科医マルロー(ダグラス・フェアバンクス・Jr.)はボスニア国からの表彰と公開手術の依頼を受ける。同国のガルコン大佐(ジャック・ホーキンス)に歓待され手術をおこなうが、患者は独裁者ニバ将軍だった。手術後に将軍が急死してしまい、殺されると気付いたマルローは行きずりのショーガール、リザ(グリニス・ジョンズ)とともに国外脱出を図る。

隠れた名作。
サスペンススリラー、スパイ活劇としてめちゃめちゃ面白い。

舞台はボスニアの某国だけど、どうも最近の日本の隣国を思わせる情報統制、全体主義の中で起こる謀略だ。

見事な逃走劇はヒッチコックを感じさせつつ、完全に悪役なのに憎み切れないガルコン、活発で口うるさいリザ、小ズルいテオドールと登場人物のユニークさも光っている。
まあ、ラストはちょっと拍子抜けだったけど…

太々しく全体主義を語るガルコンを演じるのは、「戦場にかける橋」「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」という超大作で脇役を務めたジャック・ホーキンス。さすがに貫禄がある。

そして登場時間は短いけど、悪党テオドールとマルローとの掛け合いが楽しい。
彼の “髪を切りに行っただけなのに!” というセリフや、将軍の写真を投げ捨てる仕草なんかは絶妙だ。

登場するみんなが被害者で、行きずりで巻き込まれるプロットは「狙撃者」「ボーン・アイデンティティー」の先駆けかも。
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