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絶壁の彼方にのNのレビュー・感想・評価

絶壁の彼方に(1950年製作の映画)
4.2
かなり面白い。最後までひたすらサスペンスが映画を牽引し続けていく。ヒッチコック系統サスペンスのお手本のようだと思ったら監督はバルカン超特急の脚本家らしい。「独裁者の死を知ってしまう」ってことが逃走/脱出の動機だけど、ナラティブとしてはその理由について深くつっこんでなくて(もちろんなぜ逃げるのか/追うのかについてはどうとでも解釈可能だけど)結局それ自体の意味は比較的どうでもいいってのが典型的なマクガフィンだなと(ラストで御都合主義に加担するから厳密にはマクガフィンではないかもしれないが)。オペ中に飛び交う現地語(たぶん役者たちは東欧風のデタラメ言語を喋っている気がする)と主人公の視線だけで不安を煽る演出から何かが始まる感じがして痺れるし、その後も言語がわからないからこそ成立するサスペンスが盛りだくさんで、実質的にサイレント映画と言っていいかもしれない。劇団の支配人が国家警察に通報するカットで二階と一階の様子を一つの画面に収める構図がかっこいい。
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