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四十八歳の抵抗の3104のレビュー・感想・評価

四十八歳の抵抗(1956年製作の映画)
3.4
男四十八歳。
今ならまだまだ働き盛りだが、当時は一線を退いてのんびり隠居も視野に入れようという年齢(だったらしい)。
ただ遊び呆けるには歳を取り過ぎたし、欲を忘れてしまうにはまだ若過ぎる。そんな年頃のサラリーマンが試みる、冒険という名の抵抗とは・・。

山村聰演じる主人公が序盤、本屋でふと手に取る本がある。ゲーテの「ファウスト」。
今作はこの「ファウスト」がモチーフになっている。

大人しい山村ファウストを誘惑する悪魔メフィストフェレスに相当するのが、主人公の部下でもある船越英二。
神出鬼没、正体不明。山村の行く先々になぜか現れ、まさに悪魔よろしく言葉巧みに彼を冒険の道へと誘う。こういう不気味さを携えた捉えどころのない役をやらせるとさすがにうまい。

そんな船越に連れられたバーで、山村は19歳の小娘「ユキちゃん」(演じるは雪村いづみ。不思議ちゃんな感じが妙に魅力的)と出会い彼女に入れあげる。四十八歳の冒険という名の色ボケよ。

山村・杉村春子夫妻の一人娘役に若尾文子。
オープニングで恋人役の川口浩と吐息混じりのエロスなキス、そして家に帰って乳バンド丸見えの生着替えと、序盤はサービスカットで畳みかけるもその後はそれほど出番もなく。どこか添え物的な感じ。とはいえ長めのスカート姿や朝の寝巻姿がIt's so cute。映画の出来とは関係なく、この頃の“ぷっくり顔のあやや”はまことに愛らしいのである。

映画はあややと川口の恋に対する「父親・山村」と、ユキちゃんにのぼせ上がる「男・山村」のパートが絡み合って描か・・れはせず、両者(特に後者)の描写は次第にチグハグになってゆく。挙句はメフィスト船越が最後にフッと煙のように物語から消えてしまう。ユキちゃんとも結局うまく行かず、「冒険」のあと現実に独り取り残されたような山村を映して映画は終わる。

その背中はまるで、ヘンテコな映画を観せられ座席で「?」と首をかしげたままの我々観客のようではないか。
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