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スピオーネの河のレビュー・感想・評価

スピオーネ(1928年製作の映画)
4.6
冒頭のはちゃめちゃなモンタージュで一気に掴まれた。ちょうど見たところだったウェス・アンダーソン『フレンチ・ディスパッチ』のバイクシーンの引用元だろうシーンがあった。
裏で悪を操作してる銀行のボスがいて、ヨーロッパへの復讐のためにそれに仕えている女スパイがいる。それに対してドイツの警察がいて、解決のためにエージェントを雇う。そのエージェントと女スパイが恋をすることによって任務と相手の間で葛藤する。それと銀行のボスとエージェントの対決が並行に進むっていうスパイアクション的な話で、ボスの仕掛けによって話がドライブしていく形になっている。
冒頭の強盗、警察から匿うシーン、恋に落ちるシーン、ダンス、出し抜き合い、カーチェイス、時間制限のある隠し部屋の捜索からピエロの劇まで、色々なサスペンスやアクションがつなげ合わされた形になっていて、それぞれに山場があるので長さの割に退屈しなかった。全体で良いというよりは瞬間的な良さを叩き出そうとしてる感じがある。アクションのための話って意味では『メトロポリス』の後半がずっと続くような感じがある。
巨悪の破滅、裏切りの連鎖する中世ファンタジー、SF大作って撮ってきて、それぞれが社会に向けた壮大な教訓映画だったことを考えると急に安いプロットになっていて、さらにこれまでと違いお金のやたらかかってそうな全編セットではなくなっている。ただ、その安さがこの永遠にテンションの上下を繰り返す映像的なはちゃめちゃさとかなり合致している感じがあって、この監督の映画の中でもかなり好きな映画だった。
『戦く影』や『プラーグの大学生』など、当時のドイツ映画で良く使われている感じのある、社会を裏で操る存在があってその存在は道化で、その存在が映画自体を進めていくっていうメタ的な構造がこの映画にもある。それを現したような、その存在が幕を下ろさせるラストが非常にかっこよかった。
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