そーいちろー

青の稲妻のそーいちろーのレビュー・感想・評価

青の稲妻(2002年製作の映画)
4.0
十年ぶり以上に観たけど、改めて観てもこの当時のジャジャンクーの描く中国の風景は沁みる。国家としてはどんどんと大国としての地歩を固めつつあるのに対し、そこから取り残されたように過ごす市井の人々のどうしようもない日々を、その無軌道な日々と同化する如くの手持ちカメラでざらついた風景とともに映し出す。当時はシャオジイの苛立ちだったりが、それこそ青臭く描かれていることを感じていたけれど、ビンビンの乾いた絶望というか、もっとずっと根源的な諦めから来る感じ…グッと来たな。

映像の中で描かれる憧憬の対象としての未知なる喜び(英題はunknown pleasures)はおそらくこれから大国へと向かっていくだろう中国が、それ自体が果てなく遠くにある「アメリカ」であることは、WTOの加盟や北京五輪決定、作中で描かれる米国映画(おそらくダンスホールでの引用やDVDパッケージから推測するに、「パルプフィクション」)や、自国の通貨の何倍もの価値を持つドルだったりに象徴されている。

果たして、この映画が撮られてから20年が経ち、中国は米国と世界を二分する大国となり、この映画に描かれるような原風景はぐっと中国大陸からは減ったのかもしれない、と思うと、色々と思うことは多い。

中国の偉大さや漢民族の偉大さをジャジャンクーは撮りたかったという。いま、どんな映画撮るんだろう。
そーいちろー

そーいちろー