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青の稲妻のシネマノのレビュー・感想・評価

青の稲妻(2002年製作の映画)
3.6
『此処じゃない何処か、今じゃないいつか、自分じゃない誰か…を求める若き日々』

「魂が燻るような口づけ」
「繰り返される無常」
「自分を思い知るカラオケ」
「代えがたいふたりの時間」
「青い衝動の行く末」
冒頭からラストシーンまで、
いったい幾つの青春のやるせなさが映し出されただろう。
初めて観たジャ・ジャンク-作品はとても刺激的だった。

21世紀初頭、中国の地方都市。
そこがどんな場所であったのだろう。
大人にとってだけでなく、
若者にとっても格差や閉塞感を強く感じさせる場所で。
立ち並ぶ古びた建物が箱のごとく、
夢や望みを抑え込むような感覚。
それでも野望や欲は留まることを知らない。
学や才も努力も知らなくたって、手を伸ばす、飛び立とうとする。
そんな主人公たちのような若者が、どれだけいたのだろうか。
ジャ・ジャンク-監督は、そんな若者たちの刹那の日々をクールに切り取っていく。
みっともない日々を、そんな事すら考えずに駆け抜ける若者のリアルでもって。

こんな所じゃない、どこかで生きていたい。
今の状況じゃない、もっと違ったいつかの自分を生きたい。
独りの自分じゃない、誰かとある自分を生きていたい。

けれど、そんな想いを天に投げかけたところで、飛べやしない。
手を伸ばしてみたところで、届きやしない。
嗚呼、どうしようか、俺(わたし)たち。
でもどうせ生きてるんだ、俺(わたし)たち。
楽しい、辛い
嬉しい、悲しい
やるか、めんどくさい
心地いい、苦しい
…生きてる、生きるか
垂れ流される日々で、変わるもの、変えられないもの、得るもの、失うもの。
その確かな流れの行き着く先に、彼らはどんな日々を生きているのだろう。
唐突に訪れるラストは、彼らの日々との心の重なりを強く思わせる。
あれ、自分もここではない、今じゃない、自分じゃない何かを求めてる…?
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