てつこてつ

ルードヴィヒ/神々の黄昏のてつこてつのレビュー・感想・評価

ルードヴィヒ/神々の黄昏(1972年製作の映画)
4.0

贅を尽くした映画作品とは、まさにこのこと。

数年前の夏にドイツのノイシュヴァンンシュタイン城を訪れたこともあり、険しい峡谷に世界一美しいこの城を建立させた「狂王」の異名をとるルートヴィヒ二世の生涯を描いたこの映画を無性に見たい衝動に駆られた次第。

完全復元版ゆえ4時間という超長尺(自身の鑑賞歴ではベイルマンの「ファニーとアレクサンドル」に次ぐか?)だが、全く飽きることなく、ヴィスコンティならではの一切妥協を許さぬ豪奢な世界観にゆったりと浸ることができた。

正直なところ、ストーリー自体は、歴史で語られている部分をサラリとなぞっている程度で、もう少し観客目線に立って、王の苦悩を多少なりとも分かりやすく描いてほしかった気もするが、これも良い意味でヴィスコンティ仕様なのかも。何よりも、圧倒的に豪華絢爛な城内の美術セット、衣装が素晴らしい。

また、ヴィスコンティの秘蔵っ子であったヘルムート・バーガーが主人公を熱演しているのだが、若かりし頃のルートヴィヒ二世の肖像画と何と似ていることか。オーストリア皇后エリザベート役のロミー・シュナイダーも出てくるだけで華がある希有な大女優で、この役は、まさにハマリ役。王の弟で精神に異常をきたすオットー役のジョン・モルダー・ブラウンの少女漫画ばりの美青年ぶりも凄みを感じるほど。

個人的にはヴィスコンテイ作品の中では「ベニスに死す」「山猫」のほうが好きだが、この奇才監督の凄まじいまでの執念、完璧主義が感じられる傑作であることには間違いないだろう。
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