よしまる

映画に愛をこめて アメリカの夜のよしまるのレビュー・感想・評価

4.2
 オードリーヘプバーンの「いつも2人で」のとこにも書いたけれど、そのときチョイ役で出たジャクリーンビセットに惚れ込んだトリュフォーがオファーして生まれた映画で、彼女を想定してシナリオも作られた。

 と、聞いていたはずが、最近になって実はジーンセバーグに断られてジャッキーになったと知って唖然・笑

 まあそれにしてもあらためて彼女のベストパフォーマンス。一見、お飾りのお人形のような役どころかと思いきや、なにげない仕草や表情はどれも計算され尽くしており、演技派として長く活躍していることも納得。もちろんくるくると変わるお召し物も素晴らし!
 ファッショニスタぶりは個人的には「ブリット」のほうが魅力的だけれど、映画の衣装と女優の私服という二本立てを観れるのがうれしい。
 ちなみに本作は映画の小ネタが満載で、「この女優、車の追跡アクションの映画で見た」みたいなセリフがある。(カーチェイスって訳そうよw)

 すみません、ついジャッキーの話に夢中で💦

 さて本題。トリュフォーが描く、映画撮影の舞台裏映画。監督をトリュフォー自身が演じ、次々降りかかる難関を乗り越え完成へ至るまでを、過去の映画のオマージュをふんだんに用いて、いかにもな撮影トラブルあるあるから、キャストやクルー間の恋愛あるあるまで盛りだくさんに描いてゆく。
 虚構織り交ぜているのだろう、盟友のゴダールとは本作をきっかけに友情にヒビを入れてしまったそうだ。確かにかつてのトリュフォーの映画に比べるとハリウッドに迎合したような安易なシークエンスも多い。それもまた楽しいけれど。

 あくまでトリュフォーの目を通した映画製作の現場であり、彼の思考や妄想が透けて見えるのは当然のこと。そこに好き嫌いが生じるのはやむを得ない。

 けれど。この映画のステキなところは、映画製作の芸術性を鼻にかけることもなく、ツライばかりで大変だよおと同情を引くわけでもなく、ましてこんなに凄えんだぜと自慢しているわけでもないことにある。
 「映画を作る」という夢のような現実を、トリュフォーというイチ映画人の視点で映画を作る喜びや楽しさをただ淡々と描くのみ。そこに共感しうる人は、きっと「映画を観る」という受け身だけでなく、「映画を作る」という事実にも、感動を得ることが出来る人なのかもしれない。
 だって何もない0のところから、誰かが何かを一つずつ積み重ねてはじめてボクたちの観ている映画が生まれているのだから。