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映画に愛をこめて アメリカの夜のCinemanのレビュー・感想・評価

4.0
『アメリカの夜』
フランソワ・トリフォー監督
1973年公開フランス
鑑賞日:2023年2月20日 U-next

映画が好きだと言う人には必ず見てもらいたい作品です。
映画の裏側をご存知ですか?

【Story】
人々が行き交うせまい通りにある広場の地下鉄の出口から一人の青年(ジャン=ピエール・レオ)が出てきます。
青年を追っていたカメラが通りの反対側を歩いている中年男(ジャン=ピエール・オーモン)を追い始めました。
青年が中年男の目の前につかつかつかっと現れていきなり中年男の顔に平手打ちを食わせます。

「カット!」と声がかかります。

今までの映像はニースにあるビクトリーヌ撮影所内に建てられた市街地のセットで行われている『パメラを紹介します』という新作の撮影風景だったのです。
『パメラを紹介します』という映画は父親と息子の嫁が恋に落ちて駆け落ちする話です。

面白い映画というのはすべてそうなんですが物語などど〜でもいいんです。
と、また、暴言を吐いておきます。

【Trivia & Topics】
*リリアン・ギッシュをご存知ですか。
映画の冒頭で古い無声映画の画面に“リリアン及びドロシー・ギッシュに捧げる”というタイトルが出ます。
彼女たちはサイレント映画を代表するスターです。
ドロシーはトーキー時代になり引退しますがリリアンは1980年代まで女優を続けた大女優です。

*トラブルしかない。
撮影現場では次々と問題が起こります。
映画監督はすべてを解決しなければならない過酷な役職なんです。

・撮影開始までに現れない大物女優をいつまで待つか、

・アルコール依存症でセリフが覚えられない往年の大女優をどう扱うか、

・大人になりきれず女性に甘えている主演男優をどうなだめるか、

・気に入った小道具を選びどのように細工してもらうか、

・スタッフの色恋沙汰をどうするか、

・取材に訪れたマスコミにどう対応するか、

・スタッフや出演者たちから次々浴びせられる質問にどう答えるか、

・ラッシュ(撮影途中の映像)を見て再撮影するかどうか、

・プロデューサーに約束した制作費とスケジュールでどう撮影を終わらせるか。

映画監督は天皇です。
だけど毎晩うなされるほど厳しい役職なんです。
トリフォーはそれを演じています。
あ、そうか、トリフォーにとっては日常なので演じることもなかったのかも。

*お金を稼ぐのなら他のことを。
過酷な現場で自分の与えられた職務をまっとうするスタッフたち。
職人としてのプライドがあります。
お金を稼ぐためならばもっとラクな仕事はあるけれど、面白い映画を創りたい、関わりたいという想いが強いんです。
よく言われているのが、
映画創りは一度やったらやめられない、と。

ぼくは人一倍虚弱だったので映画製作一本で足を洗うことが出来ました。

【5 star rating】
☆☆☆☆
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