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忍者と悪女のhorahukiのレビュー・感想・評価

忍者と悪女(1963年製作の映画)
3.9
魔法協会会長vs先代会長の息子の魔法バトル!

家に入ってきたカラスが喋ったと思ったら、「魔法協会会長の屋敷で、2年前に死んだお前の妻を見た」とか言うもんだから、「マジで?」ってなって会長のところに一緒に怒鳴りこみにいくゴシック忍者コメディホラー。

AIPによるポー×ロジャーコーマンシリーズ第5弾。ボリスカーロフ、ピーターローレ、ヴィンセントプライス、ジャックニコルソンという超豪華俳優陣の共演が、怪奇俳優の歴史における橋渡し的な意義をも感じさせる興味深い作品でした。

『大鴉』の朗読と荘厳な屋敷を見上げる映像、コーマンやハラー関連の作品に良く見られる絵の具を混ぜ合わせたような色彩や、屋敷の凄まじい美術が由緒正しき正統派ゴシックホラーの空気感を漂わせ、プライスの威厳のある表情と振る舞いが有無を言わせぬ説得力を生み出している。そんな中を侵入してくる大鴉が、観客の思い描く作品のムードを一瞬で塗り替えてしまう衝撃(笑劇)が最高にアホらしくてクール!

ポー×コーマンの前作『黒猫の怨霊』の第2話『黒猫』のコメディ演出のウケが良かったために本作もコメディホラーを志して製作されたようです。

ゴシックホラーという格調高さのある形式を逆手にとって、真逆のアホらしさに溢れたコメディ要素を両者の魅力を損なわせずに両立させたバランス感覚が素晴らしく、コメディリリーフとしてのピーターローレの表情と言動の間のギャップがそれぞれの空気感を牽引し、プライスという俳優の持つ厳格な性格を利用して、彼が表情を崩すという行為をスイッチとするかのような切り替えにコーマンの演出のうまさを感じました。

そこに威厳とか生真面目さを体現するようなボリスカーロフが加わることで、様式・形式からの逸脱が笑いへと変わっていく本作の方向性が決定づけられるわけで、役者が纏ってる印象やイメージをうまく利用し、最大限に活かしてるように思いました。

少し上からキャラクターを見下ろすカメラを多用することにより滑稽な印象を強めたり、食卓のシーンでは同時にカメラ内におさめるキャラの組み合わせを次々に変えることでそれぞれの間に生まれる温度差が、それまで観客に植えつけてきた予想を覆させ、作品自体の見え方や流れを大きく変えていくのが面白いし、顔のアップに対して自信・確信を与えることで観客に与える印象をコントロールするさり気なさも好きでした。

そして何よりの見どころはハリーポッターも顔負けなクライマックスの魔法バトル。ポッターvs例のあの人の対面バトルは絶対本作から影響受けてるはず。ポッターと違って、本作は次から次に魔法を撃ちまくる魔法の応酬が見れるからめちゃ楽しい!蛇を出現させて相手の首を締め上げ始めたと思ったら、それに対抗して蛇をマフラーに変えたり、コウモリを相手に向かって飛ばしたら、相手がそれを扇子に変えて扇ぎ始めたり。ガチバトルってよりかはセンスを競うようなバトルなのが良い感じ。挙げ句の果てには生卵投げて喜んでるというね。

ジャケ画像によると彼らは忍者らしいですが、どう考えても魔術師にしか見えないっす…。本人たちもそう言ってるし。どっから忍者って来たんやろ。アメリカでつけられたタイトルならわかるけど、邦題だよね…(^_^;)
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