ヴィム・ヴェンダース監督の"ロードムービー三部作"2作目。
作家志望の迷える青年が、故郷グルグスタッドを離れ、西ドイツを旅する。
「孤独は実在じゃない。それは外から見て想像でつくられた言葉だ。」「陽気な孤独」「自分を演技者として意識するときの状態」
薄暗く、薄汚く、重苦しく、地味で、孤独なロードムービー。正直退屈に思う時間もかなりあったが、その経験こそが"思い悩む"ということだと納得できた。興味深いシーンや心に留まる台詞がいくつもあった。
作家志望の悩める青年に、苦悩や葛藤を抱える戦後ドイツの姿が重ね合わされているのだろう。元ナチの将校、政治と文学の関係性、ドイツの孤独に関する講義など、ドイツに対する自己言及的な要素が多々あった。
閉じ籠もったオープニングから、開かれたエンディングへ。グルグスタッドの街の空撮からアパートの一室へと入り込み、主人公が窓ガラスを素手で割り、自らの血をなめる。壁をぶち破りたい!生きている実感が欲しい!という強い意思が込められたオープニングシークエンスだと思った。最終的に、主人公は、様々な「まわり道」を経て、ドイツから出国する選択をする。
一番興味深かったのは、自殺寸前の落ちぶれた実業家が行った"ドイツでの孤独"に関する講義シーン。〈よそよりも深くこもって、より苦痛だと思う。理想主義的な伝統のせいだろう。不安を超越するために、あらゆる観念が生活に導入された。勇気・忍耐・勤勉などを美徳として、不安から目をそらさせる。どこよりもこの国では哲学が国家哲学として使われた。犯罪的手段も不安に打ち勝つためであれば合法的とされた。不安は虚栄や恥のように扱われる。だからドイツでは孤独も暗い無表情の仮面をかぶっているんだ。仮面の孤独。ドイツの死せる魂だ。〉大の当事者であろう元ナチの将校や、戦争時代を知らない世代が話を聞かずに部屋を後にしたことにも、ドイツの内情が表されているのだろう。
『パリ・テキサス』のナスターシャ・キンスキーのデビュー作。
母親から息子へ。「定職がないことを非難されても怯むな。枠にはまった人間は面白くない」
「1人で気ままに行きたかったからだ。...1人になるとやはり寂しい。...僕は無意味なまわり道ばかりしているようだ」
「自然に接するとほっとする。童心に帰れるから。」
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