ダンクシー

まわり道のダンクシーのレビュー・感想・評価

まわり道(1974年製作の映画)
3.4
「"理屈をつけてテレーゼと別れてきたのはつまりは1人で気ままに生きたかったからだ。山頂で奇跡を待ったが雪嵐も起きなかった。1人になるとやはり寂しい。なぜじいさんを脅したのか...。僕は無意味なまわり道ばかりしているようだ」

話がかなり断片的に繋がっている。足りない部分こそ多いツギハギ型の作品。イマイチ掴みどころがないと言えばそれまでだが、観る人によって感じ方が全く違う作品だろう。作家志望のヴィルヘルムが旅の先々で出会った人々とのロードムービー。ストーリーもあるのだが、会話のやり取りに重点を置いている。だから最低限の必要な場面のみで構成されている。文学や政治など様々なテーマが哲学的に論じられていく。正直こんな会話する事ないからあんま分からなかったし、会話を聞いてて全く楽しくはなかった。でも、俺には作れない・出来ない会話だからその点興味深い内容だった。
劇中で唯一、一言も喋っていないナスターシャ・キンスキーが1番印象に残っている。勿論可愛いからでもあるけど、表情をほとんど変えず会話する皆を不思議そうに静かに見つめている姿がなんとも印象深い。

「君の欲求とやらに意味はあるのか?」
「個人的な欲求さ。僕にとってそれがすべてだ」
「複雑だな。政治で満たされぬ欲求とは」
「政治と文学が一緒になれたらいいんだが」
「そしたら世界も終わりさ」

結局旅をしたけど、全部まわり道で、それらに何かがあるわけでも得られるわけでもない。意味の無いものだった。ヴィルヘルムは旅で何かを得た訳でも何かに成った訳でもなく、目の前の出来事にそれなりに向き合ってみようとしただけで、映画として退屈な仕上がりになっている。けれど、それで正しい作品かもしれない。いわゆるこの旅のような"無駄な時間"を過ごすことは、悪くないことなのかもしれない。
作品を書けなかったのは才能の有無などではなく、ありのままの世界を見ずに偉大になろうとしていたからだ。彼にはプライドがあり、尊大な目的があった。しかし現実に目を向けていない。だからこそ、自分の世界だけてまはなく、まわり道をしてでもリアルの世界を知る必要があったのだ。


p.s.今の時代じゃ14歳の子を裸にするのは出来ないし一発アウトだろうね
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