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ヒストリーボーイズのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ヒストリーボーイズ(2006年製作の映画)
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トニー賞舞台の映画化。80年代ヨークシャーで名門大学を目指す受験クラスと教師たちの群像劇。生徒役に舞台のオリジナルキャストである若きドミニク・クーパーやラッセル・トベイ、ジェームズ・コーデンが出てるけどミュージカルではなくて、歌う場面は僅か。文学や詩、美術やクラシック映画をふんだんに引用したダイアローグには含蓄があり、芸達者なキャストの流れるような台詞回しが如何にも舞台らしい。
成績優秀でも品のない男子高生たちは、とりあえずオックスフォードのような大学に受かるのが全てだが、教える教師にはまた各々のドラマがある。想像力と教養を重視する古い世代のヘクター先生、受験テクニックを仕込む若い特別講師アーウィン先生、歴史から切り捨てられた女性としての歴史教師。生徒は誰に学ぶべきなのか。そして受け継がれる教えとは。
一応、メインストーリーは教育が歴史を作るみたいな良い話に落ち着くけど、背景にはもちろんサッチャリズムの時代がある(何せまず流れるのがThis Charming Man!)。ヨークシャーといえばそのダメージを強く受けた炭鉱町。豊かな無駄があった古い時代は葬られ、非情な効率主義で勝者だけが生き残る。とはいえ勝ち組にも期待された将来はもたらされない。過去が美化されて残るのみ。ヘクター先生とあのクラスの記念写真は忘れられた戦没者の碑と同じだ。
ゲイであるヘクターとアーウィンは対照的だけど、どちらも人間的には反面教師(同情的に描かれるがヘクターには明らかに問題がある)。生徒側にもゲイとして悩んだりする子がいるし、エンディング曲はルーファス・ウェインライト。歴史から排除された者という意味なんだろう。ただその意図が重いようで結局軽いようでモヤッとするし、教師と生徒、生徒同士の交流や関係には特に起伏がないまま終わってしまった。
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