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昭和残侠伝のzhenli13のレビュー・感想・評価

昭和残侠伝(1965年製作の映画)
3.8
こちらも『日本侠客伝』などとともに『クィア・シネマ』で引用されている作品。これがあの有名な健さんの唐獅子牡丹か〜。助監督に降旗康男の名がある。プロットはほとんど『日本侠客伝』と同じだけど、要所要所の見せ場で起伏があり編集も省略が効いていてダレない。高倉健はこちらの方が饒舌というか表情豊か。あと夜のシーンが矢鱈と暗い。普通どこかに光源を置くものだけどそれが無く、アメリカの夜の照度を極端に下げたようなシーンもあり、顔の判別がほとんどできないところもある。

シリーズものやジャンルものは続けてるとだんだん過剰になったり過激さを増していくものだが、本作にもその萌芽がみられる。
以下〈〉は菅野優香『クィア・シネマ』(フィルム・アート社)やくざ映画についての記述より引用
〈男はひとりで「男」になることはできない。すなわち、ほかの男からの承認があって初めて「男」というフィクションが成立する…〉
〈…また「女」を媒介にして、男性同士が相互に依存し合う〉

本作では江原真二郎が妻役の三田佳子を高倉健が慕っていたことを知った上で、三田佳子を一人で高倉健と会わせる。それがおそらく後年になると、男同士の絆を深めるために情婦または恋人の女性を「共有」するという表現が過剰になり、女性はモノ化されていくのだろう。

高倉健と客人の池部良との結びつきを示す表現として、池部良が高倉健の腕に入った弾丸をドスで抉り取るシーンがあり、中盤の見せ場になっている。高倉健のアップと、腕に刃を立てんと目を煌めかせる池部良のアップが切り返され、苦痛に表情を歪めながら互いに笑みを見せるという非常にエロティックなシーン。
またクライマックスはスプリンクラーか何かが破壊され土砂降りのようになる室内でアクションが展開され、見応えある。その暗く狭い通路で濡れそぼる高倉健が池部良を抱きかかえるショットなど、なるほどホモソーシャルを超える表現となっている。

池部良の来訪シーンで、例のやくざの仁義を切る口上をお手本のようにしっかり見せてくれる。「そちらさんからお直りください」「いえ、そちらさんから」と何度も譲り合うのちょっと笑った。
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