タマル

昭和残侠伝のタマルのレビュー・感想・評価

昭和残侠伝(1965年製作の映画)
1.6
せ〜な〜で〜 吠えて〜る
唐獅子牡丹〜 ジャキンッッ!
「死んでもらいます」

以下、レビュー。


ご存知任侠映画の金字塔。
内容は任侠ヒーロー物+昼ドラといった感じです。

中学生の時分に、突然自分の中で「任侠映画」ブームが起こりまして、これ系の映画を観まくっておりました。
で、久々に今作を鑑賞。
なーんか「こんな面白くなかったかなー」みたいな感じでした。
歳をとって中学のころ気づかなかった不快ポイントが目につくようになり、様式美に乗り切れなくなっていたようですね。

まず、画面に動きが少ない。
これがすごく辛い。
源之助親分がご存命の序盤、とにかく親分がつらつらつらつらと状況を説明するのですが、静止画と見紛うほど親分の顔面アップ絵から画面が動かず、ボーッとしてしまって話が入ってきませんでした。 もっと相手のリアクションを映すとか引きでとってみる色々してくれないと集中力が切れてしまいます。名シーンとされている「軒下の仁義」でも、同じ理由でボーッとしてしまい楽しめませんでした。

次にメロドラマが全くいらない。
恋愛関係とは、人間のエゴが最も出る関係です。
にもかかわらず、神津組の奴らは全員が無菌消毒された「良い男」で、女は助けられて惚れる、みたいな底が浅すぎる関係ばかりが出来上がっていきます。
特に主人公の誠次には敵も味方もみんな無条件で畏敬の念を抱いているため、どうしても周辺の人間に深く共感できず、表面的な人間ドラマしかできません。そこにメロドラマなんて高等なモンはやっぱり違和感しかありませんでした。
あと、これは個人的なことなんですが、昭和女優メソッドの演技が大嫌いなので、女キャラに共感できなかったというのも大きいでしょう。
「〜でっすぅ」「〜さっんぅ」
「なぃされるかわぁぬないじゃない」
みたいな、ブレス多めなわざとらしさが本当に鼻につきました。
これはしょうがないんですけどね。

最後に、勧善懲悪が行き過ぎてバランスが悪い。
ヤクザどもに民間人が大感謝するみたいなのはどうなんでしょう?全員気持ちのいい男ばかりが集まるヤクザの団体てどうなんでしょう?
逆に、敵サイドの親征会がリスキーな行動ばかり取り続けるのはどうなんでしょう?

自陣もファンタジー、敵もファンタジー。出てくる人々もファンタジー。
しかし、その実態は、作中でもちらっと出てきたように「貧しい露店商からかすりをとって暮らすヤクザ」同士の抗争なわけです。
ヤクザというものが持つ暴力性・野蛮性はヤクザを冠する限りは逃れらません。
すると、作り手はそれらから逃れるために主人公の口から

「あっしらみたいな稼業がいるから、かえってこういう揉め事が起きるんです。
皆さんご同様、すっ仇の商いでも始めようと思ってます」

なんて事を言わせやがるわけです。
馬鹿野郎か!? 任侠映画を作るならヤクザから逃げんじゃねぇ!!
事ほど左様に、ヤクザを無菌消毒しようとすると、やはりこういったやだみが生じて、集中できなくさせられてしまうのです。

改めてみると、健さんをカッコよく見せるための調味料を振りかけまくってるなー、という大人の事情が見て取れるようになり、楽しめませんでした。
『網走番外地』の方がオススメです。
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