みかんぼうや

それでもボクはやってないのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
3.6
公開当時かなり話題になり、痴漢撲滅の動きが加速する時勢において“痴漢冤罪”の怖さに一気に目を向けさせた強烈なインパクトを残した作品。本作を観ていなかった私ですら、本作が話題になった頃から毎日の通勤の満員電車で自分のカバンや手の位置、場所などを特に気を付けるように意識したことを覚えている。

それほど話題であったこともあって、初見の今回にして、正直なところ内容は想像のまま。話の意外性はほぼ無かったこと、そしてとにかく理不尽の連続に苦しむ主人公のことを考えると胸が苦しくなる作品ということもあり、決して“面白くて好きな映画”とは言い切れない。

一方、この作品が世の中に力強く提示した“痴漢冤罪”の怖さ、さらにその先にある“日本の法・裁判制度や警察の取り調べに関する問題提起”には、映画としてのメッセージ性の凄みを感じたし、なんと言っても痴漢犯罪における拘留から裁判の判決に至るまでの過程や判断基準、その裏にある理不尽さなど、とにかく勉強になることが多かった。

冤罪であるにも関わらず、自らの身の潔白を証明するために、これだけの時間をかけ、お金をかけ、人を巻き込み、それでも無罪を証明できる確率は3%以下、というあまりにも不利な状況。

痴漢が最低の行為であるのはもちろんだが、例えば自分がたまたま電車で女性とちょっと体がぶつかっただけなのに、その女性がたまたま性格が悪かったり虫の居所が悪く、嫌がらせまがいに「この人痴漢です!」と言われたらどうなるのだろう?それでもこの主人公のような状況に追い込まれかねないのだろうか?会社もクビになり、近所の目を気にして毎日を生きなければいけないのだろうか?などと想像しながら観ていると、下手なスリラーやホラー作品より遥かに恐怖心を感じてしまう作品だった。
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