大道幸之丞

それでもボクはやってないの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

それでもボクはやってない(2007年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

最近はめっきり減ってしまった「社会派作品」
形式としては「もしあなたが同じ目に遭った場合には」のメソッド構成になっている。逮捕されてからの「こうなるであろう」流れを全て見せてくれる。それはそれでおもしろいし皆興味をもって観ているだろう。

しかし、物語が進み、やがて決して狎れずまともな感覚を持ち合わせている弁護士役所広司と女性らしい正義感と潔癖な思考の瀬戸朝香が揃ったあたりで、私には悪い癖の「先読み」がはたらいてしまう。

——ここまでキャスティングが出来上がっているなら結末は「有罪」であろうと。それは周防監督のこれまでの作品の傾向や、一種の「フラグ」とも言える。「段取り感」だ。そうでなければドラマではない。

ただし冒頭から観ている鑑賞者でさえ「あれ?徹平はホントにやってないよな?」とこちらが何度か錯覚もしてしまう。

監督のメッセージはストレートに「日本の司法制度の問題点」を突きつけたものだと思う。とかく現代は事実をまるでわかっていない者たちがネット越しに憶測や妄想を「他人事」感覚まるだしで無責任に「決めつけ」「解決した気分になっている」時代だ。

その意味で臨場感を際立たせて、自分もそこにいるような当事者感覚を与える事に本作は成功している。

そして本作は、実際に痴漢行為をした人間が「冤罪」を主張するためのメソッドにもなり得る視点も忘れてはならない。