不在

散り行く花の不在のレビュー・感想・評価

散り行く花(1919年製作の映画)
4.2
暴力は更なる暴力を呼び、何もかもを破壊してしまう。
しかし人の純真な心もまた、それを持つ人間を呼び寄せるのかもしれない。
実の娘を虐待しているボクサーである父親の周りは彼と似たような、野蛮で他人の利益を一切優先しない人間で溢れかえっている。
家から逃げ出したルーシーの居場所を彼にバラしてしまうのも、そんな仲間の一人だ。
そして父親の暴力は、皮肉にも非暴力を説きに中国から遥々やって来た男性にも伝播してしまう。
しかしルーシーの純粋無垢な心が、彼女とこの中国男を結びつけたこともまた事実だ。
彼は馴染みのない土地で理想と現実の乖離に苦しみ、アヘン中毒になってしまってはいるものの、本来は仏教の教えを広めようとわざわざ渡英するほどの人物であり、純粋で世間知らずだからこそ、今の苦しみがあるのだろう。
だからこそ彼とルーシーは特別な絆で結ばれることとなる。
そんな二人の姿は、夕暮れに鳴る鐘の音のように美しく、そして儚かった。

グリフィスは『國民の創生』で自分と同じ思想、つまり極端な白人至上主義を掲げる者たちを集め、結果的にKKKを復活させてしまった。
冒頭に出る自戒の念を込めたような文章はその事実に対するグリフィスからの謝罪なのかもしれない。
不在

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