不在

ローラーとバイオリンの不在のレビュー・感想・評価

ローラーとバイオリン(1960年製作の映画)
4.6
しつこいくらいに繰り返される赤のイメージに、初めはソ連礼讃映画かと思いきや、恐らくこれはラモリスの『赤い風船』のオマージュだ。
ラモリスにとっての「風船」とは無機物でありながらも人間の根源的な感情を映し出す鏡のような役割を担っていたが、タルコフスキーにおいてはそれが水や廃墟という形で現れる。
水とは惑星の本来の姿であり、そこには階級や人種などの人間の事情は、一切の意味を成さないのだ。

バイオリンの音色を受けてキラキラと輝く水面がロードローラーを飲み込むようにゆらめくシーンや、バイオリンとロードローラーの音が重なるシーンなど、タルコフスキーにしてはやや安直なまでに、心の交流というものを映像に落とし込んでいる。
不在

不在