クシーくん

見知らぬ渡り者のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

見知らぬ渡り者(1957年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「ホンドー」などで有名な西部小説の大家、ルイス・ラムーア原作。

元北軍の兵士ネッド・バノン(ジョエル・マクリー)は南北戦争終結後、故郷へ帰る道中、何者かに撃たれ瀕死状態に陥るが、偶然通りかかった、カリフォルニアを目指す開拓移民の幌馬車隊に助けられた。
その内の一人、シングルマザーのエレン(ヴァージニア・メイヨ)に介抱され、元気を取り戻したネッドは、幌馬車隊一行が怪しげな山師ハーパー(ジョージ・ネイズ)によって近道に誘導されていることを知る。
だがその道はネッドの異母兄、牧場主ビショップ(バリー・ケリー)の所有する土地であり、開拓移民と牧場側の波乱を予期する…という話。

1957年の作品だが、ヒロインのヴァージニア・メイヨはかつては酒場の娼婦であり、子供は父なし子という、ヘイズ・コード廃止の先駆けともいうべきなかなか攻めた設定になっている。それ以外にも普段は悪役を演じているマイケル・ピートやレオ・ゴードンが誠実で善良な役を渋めに演じており、正統派西部劇からの脱却が配役にも意識されているのは面白い。

悪役が言葉巧みに人々を煽る事で、本来争う必要の無かった人々が殺し合う、西部劇でもなかなか屈指の邪悪さ。
まあ正直、騙される方も騙される方だなという気がしないでもないのだが、長大な距離を移動する幌馬車隊では揉め事があった際、多数決による私刑が慣例として許されていたらしいので、ある意味リアルなのかも。
胡散臭い山師に騙されて変なルートを通ってしまう開拓移民、というストーリーはドナー隊を思い出したなー。フンボルト川とかオレゴン・トレイルという地名が出てくるので余計に。

俳優たちの演技は総じて悪くないのだが、開拓民と牧場の衝突を避けようとする主人公の努力も、悪役がやりすぎたせいで完全に水泡に帰してしまい、ひねった展開を生み出せないままドンパチやるだけの、つまり従来の西部劇通りのクライマックスに突入してしまった為、脚本の不出来と凡庸さは否めない。

主演のジョエル・マクリーはおそらくヒッチコックの「海外特派員」辺りが最も有名な主演作で、それ以外にもロマンスやコメディなどあらゆる作品に出演しているが、最も多いのが西部劇だったようで、彼の出演した西部劇は一部を除き本邦ではややマイナーな作品が多く、ブロードウェイやジュネス企画、コズミック出版などが隙間産業的に出してくれているDVDのラインナップからも漏れてしまっている、本作もそうした作品群の一つのようだ。レビューがないのも頷ける。
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