Moomin

イゴールの約束のMoominのレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
4.8
あまりにも美しく、残酷な1つの約束
ダルデンヌ兄弟初期作の一つ

不正滞在者の斡旋を手伝うことによって父と暮らす少年イゴール
ある人物の死によって、湧き上がった葛藤と向き合う

ダルデンヌ兄弟作品として、一番ストーリーがしっかりとしているイメージ
それでいて初期作から後ろ姿のショットの使い方が上手い
後ろ姿のイメージが強くなるダルデンヌ兄弟だが、今作は表情へのこだわりも凄く感じる
長回しのカットによるささいな表情の変化を逃さない 映っている表情が特別エモーショナルな訳ではないのだが、心の声が伝わってくる 麻痺してたがダルデンヌ兄弟にしてはカットは多め

歯にインクのようなものを塗るシーン
颯爽なゴーカートにタバコ、手押し車
たった15歳の子供でありながら、些細な変化によって成長を感じさせる
その辺りの密度が非常に高いと思った今作は

不法滞在者の斡旋という傍から見れば人身売買 ヨーロッパにおける不法滞在者問題も根が深い
冒頭から右肩下がりに進むストーリーの中で
少年イゴールが希望と言うにはか細すぎる、約束という名の手綱を掴んでいくお話
そのラストは言わずもがな
この世界に放たれる感覚の終わり方を良くするダルデンヌ兄弟の個人的傑作
Moomin

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