櫻イミト

ブルックリン横丁の櫻イミトのレビュー・感想・評価

ブルックリン横丁(1945年製作の映画)
3.5
「エデンの東」のエリア・カザン監督による長編第一作。女性劇作家ベティ・スミスの自伝小説「A Tree Grows in Brooklyn(ブルックリンに育つ一本の木)」の映画化。

1900年頃のニューヨーク・ブルックリン。安アパートに住む掃除婦ケイティ(ドロシー・マクガイア)には聡明な娘フランシー(ペギー・アン・ガーナー)と息子ニーリーがいる。 夫のジョニーはスターを夢見る心優しい芸人だが、生活力の全くないアル中だった。ケイティは生活苦から夫への不満を募らせる。。。

家族のプロフィール紹介にあたる序盤30分が退屈で挫折しそうになったが、その後は話が転がり始め面白く観ることが出来た。

人生の機微が意外とリアルに描かれたほろ苦いファミリードラマだった。父親はフーテンの寅さんが柔和になったような男なので、結婚には向いておらず生活苦は必然だったと思う。フランシーへの学校の先生の助言「夢を見ているだけでは人を救うことは出来ない」は至言。

無責任なダメ父親でも街の人々から愛されていたという打ち出しを、監督の優しさと感じるか欺瞞と捉えるか?個人的には、後の赤狩りで多くの仲間を政府に売ったカザン監督のプロフィールを知っているので、本作にもその影を感じてしまった。

※ペギー・アン・ガーナーは「ジェーン・エア」(1943)に続いての大役で、本作でアカデミー賞子役賞を受賞
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