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イノセントのharuのレビュー・感想・評価

イノセント(1975年製作の映画)
3.5
素直になれない男。

トゥリオは妻がありながら公然と愛人を囲う傲慢な男。ところが彼が愛人と旅行へ行っている間に妻が浮気。これに気づいたトゥリオは嫉妬し、二人の愛は再燃。ところが妻は浮気相手の子を妊娠していたのでした。

ルキノ・ヴィスコンティの遺作。
20世紀初頭のイタリアのドロドロ貴族社会に、豪華絢爛な美術や衣装。濃いー!トゥリオの顔も濃いー!ということでいろいろ濃い目な作品でした。
ストーリーは、自分勝手にも程がある貴族の男が自分の行動により破滅する自業自得な話です。「僕たちは自由な夫婦だからね!」と愛人の存在を隠さないばかりか、妻に恋愛相談までするトゥリオ。彼は妻とは別れる気はサラサラない。一方貞淑な妻ジュリアーナは黙ってひたすら耐えている…かと思いきや、義弟の友人フィリッポと恋に落ち、彼の子を妊娠。ここからトゥリオの苦悩が始まります。実は妻を愛していたトゥリオ。妊娠した妻に別れを切り出されるが、別れたくない。だけど生まれた子は愛せない。正直に言えば良いのに「僕全然気にシテナイヨ」と謎に強がるばかりで、どんどんがんじがらめになっていく。ラストに愛人に事実を突きつけられても、決して認めないトゥリオは、嫌な男というより哀れな男。彼は自分を全肯定してくれる人を探していたんだと思いますが、ラストにそんな人はいないと気づいてしまった。すべて身から出た錆なんですけど、きっと彼はそのことには気づいていない。
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