シャチ状球体

イノセントのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

イノセント(1975年製作の映画)
4.0
イタリア貴族の堕落を描いている……というか、家同士の取り決めとしての結婚が意味を為さなくなっていく話。

フルチの『ザ・サイキック』が有名なジェニファー・オニールがテレザ役、そして34歳で髄膜炎のために死去したマルク・ポレルがフィリポ役で共演している(制作はこちらのほうが先)。

トゥリオとジュリアナは序盤から既に精神的な距離が離れており、体裁のために夫婦生活を続けているような状況。既に消えた愛情を欲望で誤魔化すことで傷つけ合っていて痛々しい。
2人が求める自由とは恐らくポリアモリー的で周囲の圧力が存在しない世界なのだろう。しかしこの時代、この立場には制約しかない。
トゥリオの形と行き場を失った支配欲が破滅を引き寄せていく様子は非常に文学的で、ストーリーラインがある程度抽象的な分時代性を感じさせないので今でもあまり色褪せない緩慢な滅びに浸れる……。
シャチ状球体

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