小説『小えん日記』を川島雄三が映画化。芸者・小えんが、赤線廃止後の世間を生き抜く姿を若尾文子が演じる。
これといった芸のない小えんは、芸者、ホステス、客のお妾、そしてまた芸者へ…と、職業を転々としていく。
小えんは両親を大戦中の空襲で亡くしている。「恩も義理も知らない」女の背景にあった孤独。
川島雄三らしさ全開の、ユニークな構図の数々。この人の映画は、オープニングとエンディングのショットが毎回必ず美しくキマッているのが凄い!鑑賞前の期待感と鑑賞後の満足感を高めてくれる。
若尾文子が男に抱かれる映像に、電車の通過音を重ね合わせる演出。写される人物の緊張の高まり×大きくなっていく電車の通過音。これは『ゴッドファーザー』の、マイケルが初めての殺しをするシーンに重なる。
「二号さん」とか、「お妾」とか、「ペッティング」もそうかな。出てくる言葉が時代を感じさせる。
突然訪れるラストが、不思議な引っかかりの跡を心に残す。