川島雄三監督お得意の風俗映画ではあるが、大映特有のアダルトな雰囲気とマッチしていつもの作品よりランクの高い作品に。そして何より当時28歳で、美貌も色気も充実していた若尾文子の存在感!彼女の艶やかなエロキューションが体とその場で付き合う男に合わすテクニックだけを武器にして生活する芸者役に生命力を与えている。
川島雄三作品らしく個性的な脇役がこれでもかと登場し、スクリーンに大人な香りと賑わいの活力をもたらす。パパさんという言葉がしっくり来る食えないエロ親父・山茶花究、若尾とちょっとした関係を持つ寿司職人にフランキー堺、スケベ爺の上田吉二郎、小津作品とはまた違った遊びに精通する老人を嬉々として演じる菅原通済…。更にそこへ倉田マユミや潮万太郎といった大映に専属するバイプレーヤーたちのいつもよりも生き生きとした快演も加わって楽しさが増してくる。
随所で東京の狭い小路が登場してそこを若尾がよく通るが、あれは表に出れない愛人の道を自覚もなく歩いている若尾の状況を暗示しているのか。そんな彼女がたびたび靖国神社を近くを通るというのも皮肉。
若尾が自分と向き合っているような、孤独を噛み締めているような複雑なラストが大人な余韻を残す。
スクリーンから男女の匂いや石鹸の匂いが漂ってくる錯覚がしてくるのはやはり監督が遊んでその経験が生かされている証左なのだろうか。