カトキチ

椿三十郎のカトキチのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
5.0
よく昨今の邦画は説明セリフが多いと言われがちだが、その大元は黒澤明だと思っていて、映像のダイナミックさとは裏腹に意外と状況をキャラクターに喋らせるという演出をよくやる。

ただ、それは三船敏郎という役者がそういうセリフを「説明セリフだなー」と思わせないうまさがあるからだ。

中でも「椿三十朗」は主人公でありながら狂言回しのポジションでもあるため、そのセリフの量は多く、かなり早口でまくしたてるのだが、その早さと独特のボーカリゼーション、言葉遣いもあいまって聞いてて心地良く、それが映画のリズムを引っ張っている。

全体的に「用心棒」よろしく、その冴えた頭脳と腕っ節で問題を解決していくトラブルシューターものであり、1分足らずで30人を斬ったり、クライマックスではマカロニばりの決闘があったりとアクションシーンも印象に残り、入江たか子の緊張と緩和でユーモアを作りだすなど、娯楽作としても超一級品で1時間40分というサイズも見やすく万人におすすめできる。

クライマックスの決闘で三船敏郎はどうやってあの速さで斬っているのか?という問題はあるが(デジタルリマスターのおかげで斬り終わった姿を見るとわかるようにはなっているが)、それが気になった方は織田裕二主演のリメイク版を観たらいい。まぁあれはあれでどうかと思うが……
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