Siesta

椿三十郎のSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

用心棒をさらに緻密な脚本にし娯楽性をアップデートした印象 用心棒から次第に感じてはいたが、エネルギッシュな若人から、頭のキレるアウトローへ三船敏郎の役柄が変化してきている 三十郎が勝つのは分かっていても、それに至るまでの頭脳戦が面白い 前作の勢いあるスッキリ感より今作の緻密な頭脳戦の方が個人的には好みかも
最初のところから、城代家老と大目付の対比、襲撃を受けるも起点を効かせて相手を交わす そして、それなら城代家老がピンチだと気づき、屋敷の用心棒、酒の宴で娘の罠が決まったことを示すさりげなさ、そこからの奇襲 しかも、どこにいるか分からない当人ではなく、まずは妻と娘を救い出して、敵の意図を知るという冷静さ 救出のための奇襲という展開はどうしても用心棒を想起する そして、敵は城代家老に対する人質として、妻と娘を奪いにくる 空の移動や人の流れで若侍を混乱させる しかも、先に城代家老の汚職を先に示すことで、既成事実を作り上げる周到さ ここで三十郎が用心棒同様、間に立ち振子を動かしていく 相手に腕を買われているという冒頭の襲撃シーンを活かす上手さ でもここでも若侍の失態が来て計算が狂うことでますます先が読めなくなる そこでも三十郎のリカバリーの上手さ 敵を殺し、襲撃されたフリをすることで、若侍たちの強さと大人数であるかのように勘違いさせる巧妙さ 寺にいると嘘をつくも、それが後からありえない嘘だと気づくこのさりげない失敗の組み込み方が凄い こうすることでますますハラハラ感が増していく 結果、捕まってしまう三十郎のつく椿の嘘の上手いこと ここは、若侍たちと同様に、これは行った方がいいのか?やっぱりあの人の言うことは守った方がいいのか?迷わされる そして城代家老の救出 ラストの用心棒同様の三船敏郎VS仲代達矢 静かで長い間、そこからの一瞬の勝負 吹き出す血の荒唐無稽さ そして、たまらなく痺れるあばよ
捕虜が自ら進んで押入れに戻るシーン、9人の侍が躍起になって飛び出そうとするところを制止するシーンの繰り返しはさながらコント 9人の侍は七人の侍のセルフパロディっぽさもある 三十郎ネタ、ラストのあばよは、用心棒からの援用 コメディ感も用心棒の時点で組み込まれてきている印象だったが、今作ではそれが一層増し増し そしてやっぱり、黒澤映画はめちゃくちゃハリウッド的な派手さと絢爛さがある そして、何よりも現代に至るまでのほとんどのハリウッド作品よりも緻密であるのが真の凄みなのではないか そんなことを数作見てきて感じるようになった
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