Monisan

椿三十郎のMonisanのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.3
観た。

三船敏郎、堪らないな。
冒頭の9人の話を盗み聞きして、奥の暗い部屋から出てきた時の存在感よ。渋過ぎる。
話の内容から状況を冷静に分析して、まさに岡目八目。集まった侍達を剣を抜かずに追い払う無双ぷり。
若者達が、死ぬも生きるも我々9人、と決意するが被せるように10人だ!お前は危なくて見てられねーや。格好良い…

用心棒と比べると、より娯楽色が強くなっていると感じた。
城代の奥方と娘のおっとりとしたペースに、やりづらそうな三十郎が可笑しい。
そして名を聞かれた時は、またもや目につく椿から名を取って、もうすぐ四十郎ですけどね。という件も同様に。

9人の若者達の若さ故の過ちのせいで思うように事が進められない三十郎。結果として30名の侍を一気に切る羽目に。
ここの殺陣はお見事。

椿の合図の件は、落語を聞いてるかのようなトンチで面白い。赤は切り込め、白は中止の合図だ、なんて。白い椿が大量の流れる様子は象徴的。奥方はあら綺麗と。気が抜けちゃうが、らしい台詞で良い。

事件はあっさりと解決。
そして城代が初登場。この馬面じゃなければ人望もあっただろうに、と。
馬に乗っている人より、馬の方が丸顔は笑う。このやりとりだけで、城代の魅力が伝わる。

室戸半兵衛との一騎打ちはお見事。大量の血飛沫は効いているが、これ以降、他の時代劇で流行してしまい黒澤明は反省をし、自作では控えるようになったとのエピソードがあるよう。

最後は奥方に言われた、抜き身の話を気にしていて自虐的に自分も室戸も、抜き身だと。本当に良い刀は鞘に収まっている、お前らは鞘に収まれ、と。
そして、あばよ!で映画は終わる。

仲代達也の眼力は、本作の方が強く印象的。あとは加山雄三、田中邦衛など次代の名役者達が初々しい姿で観られるのが良い。

いやぁ面白い。

黒澤明、脚本・監督
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