アラサーちゃん

椿三十郎のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.0
とっても素敵です。
まあこの布陣を以てして素晴らしくないわけがないのですが。

モノクロだ、時代劇だ、昭和の作品だ、世界の黒澤だなんだと、先入観で尻込みしてしまう人が多い気がします。でも、食わず嫌いせず、一度騙されたと思ってぜひいろんな人に観てもらいたい作品。

風変わりだが愛すべき主人公。
男たちの仁義。
勧善懲悪のストーリー。
わかりやすい起承転結。
魅力的なコメディリリーフ。
緊張感のある殺陣。
映画史に残るラスト。

とにかくすべてが面白い。日本人なら大好きな物語のエッセンスすべてが詰まっている、と思う。とんちが効いているところも好き。

黒澤作品と言えば、意外とユニークなシーンもあるっちゃあるんですが、基本的に【重い】【長い】【暗い】の三重苦なイメージを持ちがちです。わたしもそうです。がっつり持っています。
ただ、そのなかでもこれはわりとライトなタッチで観やすいような気がするので、モノクロ映画や黒澤作品ビギナーの方でも比較的入りやすい作品なのかなと思います。


黒澤映画は難しく語ろうとすればいくらでも語れるのだろうけど、簡単に言えばその素晴らしさとにかく「完成度が高い」ことにあると思う。
考え尽くされたシーンやつなぎのなにがすごいって、たぶん、他にどんな人が手を加えようとしても「これ以上何をしたって、いま以上に最高のものが完成する気がしない」とお手上げ状態になるんじゃないかな、と。わたしなんかがおこがましいんですけれども。

だからあら探ししたり現実に引き戻されたりという邪念が生まれず、安心して観ていられる。生活圏からある意味逸脱するようにして鑑賞することができる。難しいこと抜きにして語るなら、それが黒澤映画の魅力かな、と。


たとえばブランドの高い服と一緒で、「名の知れたブランド」「権威あるデザイナー」「いかにも高級な生地」そんなところばかりが取り上げられて「よく知りもせずに話題」になり、前評判や遠目から見た印象だけがフューチャーされてしまう。

でも、そんな一人歩きしているような外見に、負けず劣らずの魅力がなかまでたくさん詰まってるのが黒澤映画だと思うんです。ファッションに詳しい人も、こだわりがない人も、どんな人でも魅力的に感じてしまう、それが黒澤映画だと思うんです。

高級ブランドだからと手に取るのをためらわずに、「近くでよく見て触れて」ほしい。触れたら、着てみたら、自分が体感することでしか味わえない魅力がよくわかります。

それと一緒です。(たぶん)



結局なにが言いたいかというと、とりあえずわたしは加山雄三がだいすきなので、これもまたしかりかっこよくて惚れ惚れするのですよ・・・(そこかい)