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椿三十郎のmitakosamaのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.5
久々にスカパーで見た。3回目かな?
本当にクロサワは面白いねー。

藩の家老に反旗を覆そうと決起盛んな若侍たちを見るに見兼ねて助太刀する椿三十郎。

三船の格好よさよ…
面白いのが、椿の強さを表す比較材料が3つあると言うこと。
1つは勿論、若侍。加山雄三・土屋嘉男・田中邦衛・平田昭彦ら若いメンバーの無鉄砲さに比べ、腕もたつしガサツに見えて戦略的。
もう1つは、敵役の侍仲代達矢。三船の好敵手だが、別格な風格ある佇まいが最高。

更にもう一つ、救い出した奥方。落ち着きある佇まいで「良い刀は鞘に収まっているもの」と説く。
真の強さとは椿三十郎のような猛々しさではないと劇中で説明されている。

が、大事なことは黒澤はこの映画で、抜き身の刀の様な猛々しさを格好良く描いていることなんだよね。

武道的な鞘に収まった強さでは娯楽作にはならない。それが“エンターテイメント”ってことなんだよ。

そして全編通して何処かユーモアがあるのもエンタメ制の高さ。

椿三十郎と名乗るシーンの庭の椿の花、モノクロ映画で如何に花を赤く見せるかを試行錯誤し、墨で塗ったのは有名なエピソードだ。
「もうすぐ四十郎ですが…」の冗談に笑う微笑ましさ。この映画の最大のエンタメな瞬間かもしれない。

猛々しい椿三十郎だが、仕方なく人を斬ったときは凄い不機嫌になるんだよね。そういう人間臭い所が魅力。達観した達人の様な強さじゃないからこその魅力なのだ。
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