猫脳髄

ファンハウス/惨劇の館の猫脳髄のレビュー・感想・評価

ファンハウス/惨劇の館(1981年製作の映画)
3.7
黒沢清「ホラー映画ベスト50」(1993)第15位

冒頭から「ハロウィン」(1978)、「サイコ」(1960)のパロディで始まり、テレビでは「フランケンシュタインの花嫁」(1935)が放映されている。トビー・フーパ―の遊び心と「これから怖い映画をやりますから、よろしく」という挨拶である。

移動式カーニバルのお化け屋敷(ファンハウス)にいたずらで泊まり込んだ2組の学生カップルが過ごす恐怖の一夜という設定だが、実態はクラシックな正調怪奇映画に他ならない。カーニバル一座の怪物による殺人を目撃し、お化け屋敷の人形たちに囲まれながら出口を求めて逃げ惑う。ひとりまたひとりと劇的に殺害されながら、主演のエリザベス・べリッジが地下の機械室に追い詰められる。

怪物の造形やストーリーどうこうより、ファンハウスの人形たちと犠牲者の演出、クライマックスである機械室のシーンは興奮モノである。わけのわからない機械がガチャガチャと動くなかをべリッジが這いずり、そこで怪物との最後の格闘となるわけだが、この機械の絶対性がよい。クラシック怪奇映画の幽霊屋敷よろしく、動き出したら止まらない「死の機械」が何もかも飲み込んでいくのである(余談だが、フーパ―もマリオ・バーヴァと同様に「串刺し」好みらしい)。

「悪魔のいけにえ」(1974)でスプラッター映画の雄に位置づけられるフーパ―だが、意外にクラシック愛好家な側面を感じるユニークな作品。
猫脳髄

猫脳髄