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ポネットのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ポネット(1996年製作の映画)
3.8
 徐々に冬に向かい、肌寒くなる季節、プロヴァンスの田舎の村。指しゃぶりをする4歳の少女ポネット(ヴィクトワール・ティヴィソル)は、パパに(グザヴィエ・ボーヴォワ)にギブスにサインペンで子犬の絵を描いてもらう。交通事故で突然ママ(マリー・トランティニャン)を失った4歳の少女ポネットは、パパから不意にその事実を聞かされる。険しい山間の場所で、肩車されながら母の死を聞かされたポネットは、ボンネットで目に涙を浮かべる。とまどうポネットは、ずっと一緒にいる人形のヨヨットと一緒に、ママの帰りを待つことにする。パパはポネットを従兄弟のおばさん(クレール・ヌブー)に預け、仕事で片道2時間かけて大都市リヨンへ向かった。年上の従姉妹デルフィーヌ(デルフィーヌ・シルツ)とマチアス(マチアス・ビューロー・カトン)がどんなに遊ぼうと誘っても、ポネットは庭で、部屋で、一人で健気に天国のママを待ち続ける。おばさんはポネットを膝に抱いて、ママはもう帰らないこと、ママはイエス様と天国にいることを優しく諭すが、ポネットは「おばさんはなぜ天国に行かないの? ママはあたしといたかったのに、今はなぜ違うの」と訊ねる。従姉妹が教えてくれた、好きな人が甦るおまじないも効かない。途方に暮れた少女は天国の母親に何とか会えないか全ての策を尽くす。

 父親は彼女に対し、「絶対に死なないと誓うんだ」と肩車の下から力説するが、4歳の少女はまだ母親の死を受け入れることが出来ない。それどころか「死」という概念そのものがわからない。人はなぜ死ぬのか?死んだらもう元には戻って来ないのか?ポネットがパパや叔母さんに投げ掛ける言葉には子供ならではの純粋無垢な問いが滲むが、達観した大人はそれらを受け流す。仕方なしに同世代の子供たちに聞くしかなくなった少女は、苦悩の淵にいない従姉妹のデルフィーヌやマチアスに翻弄される。イエスは生き返ったという叔母の悪気ない言葉、タリタクムという不思議なまじない、マチアスにお腹をさすってもらった少女の一瞬の安堵。やがてユダヤとカトリックの違いを力説するアダ(レオポルディーヌ・セール)と出会い、少女は朧げながらに死の意味を学んで行く。5分間のコンテナの中で泣きじゃくった少女が遊び場で少年のこめかみに向けて放ったおもちゃのピストルと、無造作にポケットに入れられたバットマンの人形との対比、キャンディをママに舐めさせようとした少女は神様の部屋で全能の神に祈る。無我夢中で土を掘った少女の希望に対し、実にあっけらかんとした様子でフレーム内に現れた奇跡に呆気に取られるが、別れの瞬間に涙腺が緩む。今作でポネットを演じたヴィクトワール・ティヴィソルは、史上最年少の5歳という若さで96年ヴェネツィア国際映画祭で主演女優賞を受賞した。
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