ななな

テルマ&ルイーズのなななのネタバレレビュー・内容・結末

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

テルマ&ルイーズ、友人に勧められて鑑賞。せっかくなので感想を書くことにする。

『エイリアン(’79)』、『ブレードランナー(’82)』を生み出した巨匠リドリースコットの第三の作品とも名高い本作。映画序盤からテルマとルイーズの対比表現のうまさに驚く。同じ身支度のシーンであってもテルマは悩んだ挙句、乱雑に物を詰め込むのに対してルイーズはビニール袋にテキパキと詰め、キッチンの洗い物を終わらせて出発する。こうして視聴者に天然のテルマと几帳面なルイーズの性格が示されるのである。

そして、週末旅行に出発した二人。酒場でテルマがレイプ未遂に遭い、ルイーズは加害者の男を撃ち殺す。本作の転換点であるこの時、カギになるのは映画中盤で示される「テキサス」である。ルイーズにはテキサスでレイプされた経験があり、その時被害者として扱われるどころか、男を誘惑した加害者として扱われてしまった過去があり、そのことは結婚を約束した恋人にも話せていない。この「テキサス」の記憶がテルマをレイプしようとした男を撃ち殺す原動力であって、テキサスを避けて遠回りして逃げたことが彼女らの最後につながるのである。人間には誰しもトラウマがあり、そのトラウマが良くも悪くも人生の決定に大きく影響するのだ。

物語の基本構造は、『明日に向かって撃て(’69)』を思わせるバディものかつロードムービーのアメリカンニューシネマ、そこに現代アメリカで抑圧される女性の視点という組み合わせは面白い。本作に登場する男はハル(ハーベイ・カイテル)以外、女性を下にみている。レイプ未遂犯、トレーラーの運転手、テルマの旦那、JD、果ては一見味方のルイーズの恋人でさえ、テルマがいなくなりそうなときに暴れて見せたり、急に指輪を渡してみたり自分勝手な男である。こうした男たちにテルマとルイーズは反抗するのであるが、単なるフェミニズム映画にはなることなく、エンターテイメントとして十分に楽しめるように味付けがしてある。

気になった点としてはテルマとルイーズ、二人の絆により深い亀裂ができる出来事があると、仲直りしたあとのストーリの盛り上がりも大きくなり、二人の絆もより一層深まったのでないかと思う。また、プロットの構成に(「明日に向かって撃て」を十何回も見ている所為かもしれないが)これといった真新しさを感じなかった。

しかし、本作が名作なのには変わりがないのであって、シートベルトもない66年型サンダーバード、たばこをふかしながら固定電話を引っ張ってベランダで通話、こうしたビジュアルに今日も惹かれるのである。
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