SANKOU

テルマ&ルイーズのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

乱暴者の恋人と距離を保ちながら気ままな独身生活を送るルイーズと、幼稚な夫の言いなりで自分を抑えて生きている専業主婦のテルマ。
二人は退屈な日常から抜け出すためにドライブ旅行に出かける。
が、途中で立ち寄ったバーで下心丸出しで近づいてきた男と親しげになったテルマは、泥酔したところをレイプされかけてしまう。
ルイーズはテルマが持参した護衛用の銃で男を脅すが、男は悪びれることもなく卑猥な言葉で彼女らを侮辱する。
頭の中で何かがフラッシュバックしたルイーズは、その場で男を射殺してしまう。
今まで犯罪とは無縁の生活を送ってきた二人だったが、現場から逃走したことで二度と引き返せない深みにはまって行くことになる。
状況がどんどん絶望的な方向へ転がって行くのに対して、二人の人間性が吹っ切れたように開放されていくのが面白い。
特に最初は自分では何も決められず、簡単に人に心を開いてしまうために裏切られてしまうテルマと、絶望的な状況の中でもしっかりと計画を立て、毅然と前に進んでいくルイーズの関係性が変化していく過程が興味深かった。
ルイーズは距離を置きたいと思っていた恋人の思わぬ行動に、改めて自分が彼を愛していたことを思い知らされる。
夫から大切にされず、本当の愛を知らなかったテルマは、行きずりで出会ったJ.Dという青年とのセックスで本物の性の快感を知る。
結果的にテルマは裏切られ、ルイーズの逃亡資金も持ち逃げされてしまうのだが、心の糸が切れたように項垂れ泣きじゃくるルイーズに対して、テルマは根拠のない自信を持ってルイーズを奮い立たせようとする。
そこに今までビクビク怯えていた彼女の面影はない。
さらにテルマは強盗を働き逃亡資金を調達する。
もはや立派な犯罪人になってしまった彼女らに怖いものはない。
スピード違反を取り締まろうと近づいてきた警官を銃で脅してトランクに閉じ込め、何度も卑猥な言葉を放つタンクローリーの運転手を説教した末に、タンクを銃で撃って大爆発させる。
彼女らの行動が過激になればなるほど、観ていて痛快な気分になるのは、いつしか彼女らの目線に立って物語に没入しているからだろう。
それにしても登場する男たちが下衆過ぎて胸クソが悪くなる。
何故彼らは皆自分たちが支配者であり、女性とは自分の言うことに従うものだと信じて疑わないのだろうか。
本人の口からは語られないが、ルイーズはかつてレイプされた経験があり、それがトラウマになっているらしい。
彼女たちを追い詰めたのは男たちの身勝手さであるともいえる。
唯一彼女らに手を差し伸べようと働きかけたのが刑事のハルだが、彼の想いは二人には届かない。
ラストシーンはとても切ないが、ここまで引き返せない道を選んだ彼女らに、残された選択肢はなかったのだと強く思った。
もし、引き返せる道があったとしたら、それはどこだったのだろうと考えさせられた。
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