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港の日本娘のHiromasaのレビュー・感想・評価

港の日本娘(1933年製作の映画)
3.5
『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書)の冒頭、『港の日本娘』評で言及されていた、江藤・蓮實著『オールド・ファッション』の主題たる「昭和十年前後のエアポケット」については関心がある。なぜなら、蓮實が言うように、大岡昇平もまたその空気の中で書くことを始めた作家の一人だからだ。この映画で言えば、たとえば、再開した男女が、かつて彼らが並んで歩いた道を「想起」するショットの魅力は、時代と切り離して存在し得ない。蓮實の大岡評価に苦々しげに異を唱えていた江藤は、やがて「ただぼくはね、なんで大岡さんが、あるときまで、むちゃくちゃにペロペロなめるようにいろんなことしてくだすって、あるときからそうじゃなくなったかがよくわからないんですね」と、子供のようにあけすけに自らの「愛」を打ち明けてしまう。この場面こそ、同書のハイライトと言うべきだろう。
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